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注:( 初見の方は、前編より読んでください。)⇒ 前編 URL

真冬の 出来事( 後編 )*     * * * * * * 
真冬の出来事-B
足を引きずり何とか道に出ると、ちょうどそこには道祖神があった。昔、この辺は塩の道で多くの人馬が往来していた。過酷な山道のため、倒れる者もいたと言う。それで、この辺には道祖神が多い。そんな事に思いを馳せている時だった。
無音の雪景色の中、あたりが漆黒の闇に変わってきた。
遠い記憶の底から聞こえてくる、遠くから「ポッコ・ポッコ・・・。」と、馬のひずめの音がかすかに聞こえてきた。何故聞こえてくるのか分らない。これはデジャブなのか(既視感)、過去の遠い記憶なのか、脳裏の奥に引き込まれていく。

ちょうどその時、闇の中から蓑と笠をかぶった老人がやって来た。
私も白馬村に来るようになってから長いが、初めてみる光景であった。
近くに来ると老人は、「 こんな寒い中で、何してるだに。危ないずら。」と言った。この地の方言で、「 ずら・だに 」言葉だ。また、小声で「 ポッコ・ポッコ聞いたずら?」とも、言ったように聞こえた。

私は、何が危ないのか分からないまま「 写真の撮影です。」と短く答えた。

すると、「 そりゃ大変だに。今日は寒いずら、うちに来るだに。」と言われ好意に甘えてついて行く事にした。外は氷点下十度以下の吹雪の世界だ、ありがたかった。私の体はまるで氷のようで、しかも足を引きずっていた。


八十過ぎに見えるのに意外と早い足取りで、ついて行くのがやっとであった。五分くらい歩くと、かやぶき屋根の家があり玄関に招かれた。

家の中は囲炉裏があり、とても暖かい世界で、しかも明治時代にタイムスリップしたようなたたずまいであった。
お茶と野沢菜が出てきた。この辺でお茶うけは、野沢菜が定番だ。しかも、今の寒い時期が一番うまい。

20分も経つが向こうから何も話さないので、こちらからきりだした。「 お茶、とてもおいしいです。お一人でお暮らしですか。」「そうだに。」と呆気ない会話がしばらく続いた。いろいろ話しているうちに、身も心も暖まってきた。

分かってきた事があった。それは、私が生まれた1956年に、長野県北安曇郡北城村、神城村が合併し人口が約7000人の白馬村が発足したことだ。その当時、初代村長をやっていた人がこの老人であり、偶然に出逢ったのだ。
実際には、2~3時間位の会話だが、何年も前から話している不思議な感覚におそわれた、こんな事は初めてだった。

おいとまするときに、玄関まで見送ってくれた。外は、雪が小降りになっていた。
少し歩いて、ハッと気がついたが足が痛くない。

後ろを振り向き、かやぶき屋根を探したが、そこには真っ白な雪景色しか無かった。

目が覚めると、松本・信濃大町を過ぎて、車外はもう真っ白い銀世界に入っていた。

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